親知らずを抜くと決めたとき、次に気になるのが費用です。「1本1万円くらい」と聞くこともあれば「数千円で済んだ」という話もあり、情報がばらついています。差が出るのは、生え方によって処置の内容がまったく違うためです。
この記事では、保険3割負担での抜歯料の目安を生え方別に整理し、抜歯料以外にかかる費用、大学病院に紹介された場合の違い、そして自費になるケースまでを解説します。読み終えるころには、自分の場合いくらくらいを見込んでおけばよいかがつかめるはずです。
- 親知らずの抜歯は健康保険が使える。自費になるのは特別な条件のときだけ
- 3割負担なら、上顎の単純な抜歯で総額3,000〜5,000円、下顎の埋伏歯で5,000〜10,000円が目安
- 抜歯料のほかに初診料・画像検査・投薬がかかる。CTを撮る場合は3,000円前後の加算
- 大学病院は紹介状がないと初診時に選定療養費(数千円)が別途かかることがある
生え方別・抜歯料の目安
保険診療では、処置ごとに国が定めた点数にもとづいて費用が決まります。親知らずの抜歯は「普通抜歯」「難抜歯」「埋伏歯抜歯」に分かれ、この順に高くなります。
| 状態 | 処置の区分 | 抜歯料(3割負担) | 処置時間の目安 | よくある例 |
|---|---|---|---|---|
| 上顎・まっすぐ生えている | 普通抜歯 | 1,000〜2,000円程度 | 5〜15分 | そのまま引き抜ける |
| 下顎・まっすぐ生えている | 普通抜歯 | 1,000〜2,000円程度 | 10〜20分 | 骨がやや硬く時間がかかる |
| 歯ぐきに一部埋まっている | 難抜歯 | 1,500〜2,500円程度 | 20〜40分 | 歯ぐきを切開して取り出す |
| 骨に埋まっている(水平埋伏) | 埋伏歯抜歯 | 3,000〜4,500円程度 | 30〜60分 | 骨を削り、歯を分割して取り出す |
「上の親知らずは安かったのに、下は倍以上かかった」という体験談が多いのは、この区分の違いによるものです。上顎は骨がやわらかく、まっすぐ生えていることも多いため短時間で終わりますが、下顎は骨が硬く、横向きに埋まっていることが少なくありません。
抜歯料以外にかかるもの
窓口で払う金額は、抜歯料だけではありません。初診料や検査、薬の費用が加わります。
| 項目 | 3割負担での目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 初診料 | 800〜1,000円程度 | 初めての医院を受診したとき |
| 再診料 | 150〜500円程度 | 抜糸や消毒での来院時 |
| パノラマレントゲン | 1,000〜1,500円程度 | 4本すべての位置を確認する |
| 歯科用CT | 2,500〜3,500円程度 | 神経との距離を見る必要がある場合のみ |
| 投薬(抗菌薬・鎮痛薬) | 300〜700円程度 | 院外処方の場合は薬局で支払う |
| 抜糸 | 再診料に含まれることが多い | 抜歯から1週間後が目安 |
これらを合計すると、上顎の単純な抜歯で総額3,000〜5,000円、下顎の埋伏歯で5,000〜10,000円程度に収まることが多くなります。CTを撮る場合はここに3,000円前後が乗ると考えておくと、想定とのずれが出にくくなります。
大学病院・口腔外科に紹介された場合
下顎の神経に根が近い、水平に深く埋まっている、持病があるといった場合、大学病院や総合病院の歯科口腔外科へ紹介されることがあります。処置自体は同じく保険診療ですが、費用面でいくつか違いがあります。
| 項目 | 歯科医院 | 大学病院・総合病院 |
|---|---|---|
| 抜歯料 | 保険点数どおり | 保険点数どおり(同じ) |
| 初診時の追加費用 | なし | 紹介状がないと選定療養費(数千円)がかかることがある |
| 検査 | 必要に応じて | CTなど詳しい検査を行うことが多い |
| 通院回数 | 初診→抜歯→抜糸 | 初診→検査→抜歯→抜糸と分かれることが多い |
ポイントは紹介状(診療情報提供書)を必ず持参することです。紹介状があれば選定療養費はかかりません。紹介状の発行にも費用がかかりますが、3割負担で750円程度と、選定療養費より大幅に安く済みます。
自費になるケース
親知らずの抜歯そのものは保険適用ですが、次のような場合は自費、あるいは保険との併用で追加費用が生じます。
- 静脈内鎮静法……眠っているような状態で処置を受ける方法。医院により3〜10万円程度。恐怖心が強い方や、複数本を同時に抜く場合に選択されます
- 全身麻酔・入院……対応できる施設が限られ、費用も別途かかります。保険が適用される場合もあります
- 審美目的のみの処置……医学的な必要性がないと判断された場合
保険と自費の考え方については保険診療と自費診療の違いとはで解説しています。歯科の費用が分かりにくい理由は歯医者の治療費はなぜ高い?費用の内訳を解説もあわせてご覧ください。
医療費控除の対象になる
親知らずの抜歯にかかった費用は、医療費控除の対象です。1年間(1月1日〜12月31日)に世帯で支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告により所得税の還付を受けられます。通院のための公共交通機関の交通費も対象になる場合があるため、領収書と記録を残しておいてください。
詳しい要件は歯医者に行く前に知っておきたい医療費控除の仕組みで解説しています。
まとめ
親知らずの抜歯は保険適用で、3割負担なら上顎の単純な抜歯で3,000〜5,000円、下顎の埋伏歯でも5,000〜10,000円程度が目安です。金額を左右するのは生え方で、埋まっているほど処置が複雑になり高くなります。
受診前に金額を知りたい場合は、レントゲンを撮ってもらったうえで「この生え方だと総額でいくらくらいになりますか」と聞くのが確実です。抜くかどうかで迷っている段階なら親知らずは抜くべき?抜かなくていいケースの判断基準、全体の流れは親知らずとは?抜く・抜かないの判断から抜歯の流れ・費用・腫れまで完全ガイドをご覧ください。
よくある質問
- Q親知らずの抜歯に保険は使えますか?
- A
使えます。親知らずの抜歯は保険診療の範囲で行われます。自費になるのは、静脈内鎮静法などの追加の処置を希望した場合や、医学的な必要性が認められないケースに限られます。
- Q上と下で費用が違うのはなぜですか?
- A
処置の区分が違うためです。上顎はまっすぐ生えていることが多く骨もやわらかいため「普通抜歯」で済みますが、下顎は骨が硬く横向きに埋まっていることが多く、骨を削ったり歯を分割したりする「埋伏歯抜歯」になります。手間と時間が違うぶん、費用にも差が出ます。
- Q4本抜くと総額はどのくらいになりますか?
- A
生え方によりますが、上下左右を数回に分けて抜く場合、初診料や検査費は初回にまとまるため、2万〜3万円程度に収まることが多くなります。ただし4本とも埋伏している場合はこれより高くなります。事前に総額の見込みを聞いておくと安心です。
- Q紹介状はもらったほうがよいですか?
- A
大学病院や規模の大きい病院を受診する場合は、あったほうが費用面で有利です。紹介状がないと初診時に選定療養費として数千円かかることがあります。紹介状の発行費用は3割負担で750円程度なので、事前に依頼しておくほうが結果的に安く済みます。
- Q眠っている間に抜いてもらうことはできますか?
- A
静脈内鎮静法という方法があり、うとうとした状態で処置を受けられます。恐怖心が強い方や複数本をまとめて抜く場合に選択されますが、多くは自費で3〜10万円程度かかり、対応している医院も限られます。当日は車の運転ができないなどの制約もあるため、事前に確認してください。
- Q医療費控除の対象になりますか?
- A
対象になります。保険診療分だけでなく、治療目的で行った自費の処置も含められます。通院にかかった公共交通機関の交通費も対象になる場合があるため、領収書と通院の記録を保管しておいてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療方針を示すものではありません。費用は目安であり、実際の金額は診療内容・医院・地域や制度改定により異なります。気になる症状がある場合は、必ず歯科医院で相談・受診してください。