白く輝く歯は、第一印象を明るく見せてくれる大切なポイント。
しかし、「ホワイトニングは歯にダメージを与えるのでは?」と不安を感じて、一歩踏み出せない人も多いのではないでしょうか。実際に、従来のホワイトニングで使われる**過酸化水素(H₂O₂)**は強い漂白力を持つ一方で、エナメル質の表面をわずかに傷つけたり、知覚過敏を引き起こしたりするリスクが報告されています。
そんな中、論文「Effectiveness and Safety of Over-the-Counter Tooth-Whitening Agents」では、歯を傷つけずに白くできる新しいホワイトニング成分が注目を集めています。PAP(フタルイミドペルオキシカプロン酸)や重曹、天然酵素のブロメラインといった「非過酸化物系」の成分は、歯の表面を削らずに着色汚れを分解し、エナメル質を守りながら自然な白さを取り戻すことができると報告されています。
「白くしたいけど歯を傷つけたくない」——そんな人のために登場した、“安全性を重視したホワイトニング”が今、世界中で新常識になりつつあります。
今回はこの論文をもとにホワイトニング成分はどんな効果がありこれからホワイトニングをする上でどういったことを知っていけばいいのかについて紹介していきたいと思います。
最強のホワイトニング成分「過酸化水素」のメリットとデメリット
白い歯を手に入れるためのホワイトニング成分の中で、長年にわたり“最も効果的”とされてきたのが過酸化水素(H₂O₂)です。
歯科医院でのホワイトニングでも中心的に使われるこの成分は、歯の表面だけでなく内部の色素まで分解し、根本から白くする力を持っています。
一方で、その強い作用には知覚過敏やエナメル質への影響といったリスクも伴うことが知られています。
ここでは、過酸化水素が「なぜ最も白くできるのか」、そして「どんな点に注意すべきなのか」を、最新の研究結果をもとにわかりやすく解説します。
1.1 根本から白くする力 ― 圧倒的な漂白効果
ホワイトニングといえば、歯科医院でも長年使われている過酸化水素(H₂O₂)が代表的な成分です。今回の研究でも、その高いホワイトニング効果が改めて確認されました。
過酸化水素は、歯の内部まで浸透し、着色の原因となる分子を酸化反応によって分解します。そのため、コーヒーやワインなどによる表面の汚れを落とすだけでなく、歯そのものの色調をより白くすることができる、唯一の成分といえます。
実験では、過酸化水素を使ったホワイトニング剤が最も大きな色の変化(ΔE=9.6)を示しました。これは、他の成分とは一線を画す明確な漂白効果であり、「歯の内部から白くする」という点で他に代えのない存在です。
この強力な作用は、過酸化水素の分子が非常に小さく、エナメル質を通過して歯の内側まで届くことができるため。まさに“根本から白くする”ことを可能にする成分なのです。

異なるジェルを用いたホワイトニング処置後の色差(ΔE)の平均値と標準偏差:12%フタルイミドペルオキシカプロン酸(PAP)、5%重炭酸ナトリウム(Sodium Bicarbonate)、6%過酸化水素(H 2 O 2)、1%ブロメライン(Bromelain)、0.2%亜塩素酸ナトリウム(Sodium Chlorite)。ΔE = 1.8の点線で示された値は、臨床条件下での50%の視認性に相当し、ここでは視覚的に検出可能な色の変化の基準として使用しました。一元配置分散分析、各治療群と未治療対照群の比較、** p < 0.01、*** p < 0.001。
1.2 避けて通れない「代償」 ― 歯と歯ぐきへの負担
一方で、過酸化水素には強い漂白力ゆえのリスクもあります。歯を白くする効果は抜群ですが、その過程で歯や歯ぐきに一時的な刺激や負担を与える可能性があるのです。
まず指摘されているのが、歯の表面への影響です。顕微鏡を用いた観察では、過酸化水素で処理したエナメル質にわずかな表面の荒れ(「稜柱間溶解」と呼ばれる微細な損傷)が見られました。また、過酸化物が歯の神経に近い部分まで浸透することで、43〜80%の人が「歯がしみる」感覚(知覚過敏)を一時的に感じると報告されています。
さらに、安全性試験では、過酸化水素が歯ぐきの細胞に対して毒性(細胞毒性)を示すことも確認されています。これは、濃度や使用条件によっては、歯肉や周辺組織の細胞を傷つけるおそれがあることを意味します。
つまり、過酸化水素は「短期間で確実に白くできる」一方で、「歯や歯ぐきに多少の負担をかける可能性がある」成分でもあります。ホワイトニングを検討する際は、その効果とリスクのバランスを理解しておくことが大切です。
エナメル質を傷つけない「新常識」の成分たち
強い漂白力を持つ過酸化水素(H₂O₂)は非常に効果的な一方で、歯の表面を荒らす、歯ぐきに刺激を与えるといったリスクもあります。
こうした問題を避けながら「安全に白くする」ことを目指して注目されているのが、PAP(フタルイミドペルオキシカプロン酸)、重曹(炭酸水素ナトリウム)、そして天然酵素のブロメラインなどの非過酸化物系成分です。これらは「歯を傷つけずに白くできる」新しいホワイトニングの選択肢として、世界的に関心が高まっています。
表面構造を守る「安全なふたつの成分」
ホワイトニング剤を選ぶうえで最も気をつけたいのは、歯の表面(エナメル質)への影響です。
今回の研究では、電子顕微鏡(SEM)を使い、各成分がエナメル質の構造にどのような変化を与えるかを詳しく観察しました。
その結果、PAPとブロメラインの2つの成分では、処理後のエナメル質に変化が一切見られませんでした。
これは、過酸化水素で確認されたような微細な表面の荒れ(稜柱間溶解)が起きなかったことを意味します。
つまり、これらの成分は歯の構造を壊さずに着色を除去できる可能性があり、日常的なケアにも適した高い安全性を示したといえます。
歯ぐきにやさしい「天然酵素ブロメライン」
ホワイトニングでは、歯の白さだけでなく、歯ぐきへの優しさも重要です。
研究では、歯肉に存在するヒト細胞(線維芽細胞)を使い、各成分の細胞毒性(刺激やダメージを与える性質)を調べました。
結果として、ブロメラインだけが唯一、細胞毒性を示さない安全な成分であることが確認されました。
過酸化水素、PAP、重曹はいずれも細胞にある程度の刺激を与えたのに対し、ブロメラインは国際安全基準(ISO 10993-5)で定める「細胞生存率70%以上」をしっかりと超える数値を記録。
このことから、ブロメラインは歯ぐきなどの柔らかい組織にも刺激が少なく、歯磨き粉やデイリーケア製品に適した安全成分として注目されています。
重曹がもたらすユニークな「明るく見える」効果
市販のホワイトニング製品でよく使われる重曹(炭酸水素ナトリウム)も、過酸化水素に次ぐ高い効果(ΔE=7.5)を示しました。
驚くべきことに、この結果は「研磨」ではなく塗布だけで得られた効果です。
顕微鏡で観察すると、重曹で処理した歯の表面には顆粒状の平らな層が形成されていました。研究者たちは、この層が光の反射を変化させることで、歯がより明るく見える視覚的効果を生み出した可能性を指摘しています。
つまり、重曹は単に汚れを落とすだけでなく、光の反射を利用して白く見せるという、他にはないユニークなメカニズムを持つ可能性があるのです。
ただし、この作用の詳細については今後の研究が待たれます。
「漂白」ではなく「着色除去」という位置づけ
これらの安全な成分を理解するうえで大切なのは、「白くする仕組みが過酸化水素とは異なる」という点です。
PAP・重曹・ブロメラインといった成分は、歯の表面に付着したステイン(人工的な着色)を除去することに優れていますが、歯の内部の色そのものを漂白する作用は持ちません。
つまり、「歯本来の明るさを取り戻す」ことはできますが、「本来の色を超えて白くする」ことはできないのです。
それでも、研究ではPAP(ΔE=6.6)やブロメライン(ΔE=5.3)といった数値が示され、いずれも人が視覚的に明確な変化を感じる基準(ΔE=1.8)を大きく上回りました。
この結果から、安全性を重視しつつも「見た目にはしっかり白く感じられる」レベルの効果が得られることがわかります。
効果の限界 ― 「漂白」ではなく「着色除去」
ホワイトニングの研究が進むなかで、近年は「歯を傷つけずに安全に白くする」ことを重視した非過酸化物系成分が注目されています。PAP(フタルイミドペルオキシカプロン酸)や重曹、天然酵素のブロメラインなどは、従来の過酸化水素と比べて刺激が少なく、エナメル質や歯ぐきへの負担が小さいという大きなメリットがあります。これらの成分は、日常的なケアでも安心して使える「新しいホワイトニング」として人気を集めています。
しかし、どんなに安全性が高くても、その効果には限界があることも事実です。非過酸化物系の成分は、歯の表面に付着した汚れ(ステイン)を落とすことには優れていますが、歯の内部の色そのものを変える「漂白」作用は持っていません。ここでは、「なぜこれらの成分は内部まで白くできないのか」、そして「それでも十分に白さを実感できる理由」について、研究結果をもとにわかりやすく解説します。
市販成分の役割 ― 真の「漂白」ではなく「着色除去」
歯を傷つけずに安全に白くしたいというニーズから、近年では非過酸化物系のホワイトニング剤(PAP・ブロメライン・重曹など)が注目されています。
しかし、これらの市販(OTC)製品を選ぶ際に理解しておくべき大切なポイントは、「白くなる仕組みの違い」です。
歯科医院で使用される過酸化水素(H₂O₂)は、歯の内部にある着色成分(有機物)にまで作用し、天然の色そのものを漂白することができます。いわば「歯そのものの色を作り変える」力を持つ成分です。
一方で、市販製品に使われるPAP・ブロメライン・重曹などは、歯の表面に付着した人工的な汚れ(ステイン)を分解・除去する働きが中心です。
そのため、これらの成分は、コーヒーや紅茶、ワインなどによって沈着した着色を落とし、本来の自然な白さを取り戻すことには非常に優れています。
ただし、過酸化水素のように歯の内部まで漂白して「本来の色を超えるほど白くする」ことはできません。
つまり、非過酸化物系のホワイトニングは「漂白」ではなく、「着色除去による明るさの回復」と考えるのが正確です。
視覚的にも十分な「白さの実感」
安全性を重視した市販成分は、漂白力では過酸化水素に劣るものの、見た目で十分にわかる白さの変化をもたらすことが研究で確認されています。
歯の色の変化は「ΔE(デルタE)」という数値で表され、この数値が大きいほど色の変化が大きいことを意味します。臨床的には、ΔE=1.8を超えると多くの人が「白くなった」と感じる基準になります。
研究では、次のような結果が得られました。
| 成分 | ΔE(色の変化) | 備考 |
|---|---|---|
| 過酸化水素(H₂O₂) | 9.6 | 最も強力な漂白効果を示す |
| 重曹(炭酸水素ナトリウム) | 7.5 | 光の反射で明るく見える効果も確認 |
| PAP(フタルイミドペルオキシカプロン酸) | 6.6 | エナメル質を傷つけずに着色を除去 |
| ブロメライン(天然酵素) | 5.3 | 唯一の非細胞毒性成分、歯ぐきにもやさしい |
すべての市販成分が、ΔE=1.8の「視覚的に変化がわかるライン」を大きく上回っており、安全性を保ちながらも効果を実感できることがわかります。
つまり、「歯を傷つけずに、自然な白さを取り戻す」という目的であれば、非過酸化物系のホワイトニング製品でも十分な結果が得られるといえます。
賢いホワイトニング製品の選び方
今回の研究から明らかになったのは、「どの成分が最も優れているか」ではなく、「どんな白さを目指すか」によって最適な成分は異なるということです。
つまり、どこまでの白さを求めるか、そしてどの程度の安全性を重視するかによって、選ぶべきホワイトニング剤は変わってきます。
新常識:「安全な着色除去」に重点を置く
歯の内側まで白くする“本格的な漂白”を望む場合、過酸化水素(H₂O₂)が最も強力で確実な選択肢です。
しかし、その強い効果の裏側には、エナメル質への微細な損傷や歯ぐき細胞への刺激(細胞毒性)といったリスクが伴います。
一方で、「歯を傷つけずに、コーヒーなどでくすんだ歯の色を元の自然な白さに戻したい」という目的であれば、PAP・ブロメライン・重曹といった非過酸化物系の市販成分が、より安全で現実的な選択となります。
成分別に見る賢い選択肢
① エナメル質を守りたい人におすすめの成分
研究では、PAP(フタルイミドペルオキシカプロン酸)とブロメラインの2つの成分が、エナメル質に変化を与えないことが確認されました。
これらは歯の表面構造を傷つけることなく着色を除去できる、安全性の高い成分です。
② 歯ぐきへのやさしさを重視する人におすすめの成分
さらに安全性を求めるなら、天然酵素のブロメラインが最有力です。
テストされたすべてのホワイトニング剤の中で唯一、**歯ぐき細胞に毒性を示さなかった(非細胞毒性)**のはブロメラインでした。
エナメル質にも細胞にもやさしいこの成分は、長期的なオーラルケアにも適しており、歯磨き粉などへの配合にも理想的です。
③ 効果と安全性のバランスを取りたい人におすすめの成分
重曹(炭酸水素ナトリウム)は、過酸化水素に次ぐ高い着色除去効果(ΔE=7.5)を示しましたが、細胞への刺激が確認されているため、頻繁な使用には注意が必要です。
PAP(ΔE=6.6)やブロメライン(ΔE=5.3)など、すべての市販成分が「白さを実感できる基準(ΔE=1.8)」を大きく上回る結果を示した点は注目に値します。
「白さを最優先するか」「安全性を最優先するか」——その答えによって、最適なホワイトニング成分は変わります。
歯へのダメージを避けつつ、本来の白さを取り戻したい人にとって、PAPやブロメラインのような非過酸化物系の成分は、まさにこれからの時代の“新常識”といえるでしょう。
