子どもの歯並びが気になり、「そろそろ矯正を考えた方がいいのでは?」と感じる親御さんは多いでしょう。中でも「床矯正(しょうきょうせい)」は、小学生の時期に多く取り入れられる治療方法です。
床矯正は顎の成長を利用して歯を並べるスペースを確保する治療で、永久歯を抜かずに済む可能性を高める点が大きな特徴です。
本記事では、小学生に行われる床矯正について、治療の仕組みや流れ、メリットとデメリット、実際にどのような効果が期待できるのかをわかりやすく解説します。
床矯正(しょうきょうせい)とは?
床矯正とは、取り外し式の矯正装置を使って顎を広げ、歯が並ぶスペースを確保する治療方法です。装置にはネジがついており、それを少しずつ回して調整することで顎の幅を広げることができます。主に成長期の子どもに用いられ、自然な骨の成長を利用しながら治療できるのが特徴です。
大人の矯正のように歯を大きく動かすのではなく、骨格的な発達を助けるのが床矯正の目的です。軽度〜中度の歯列不正に適しており、抜歯を避けたいケースで選ばれることが多い方法です。
床(しょう)という名称は「装置が床(口の中の天井や床部分)に装着される」ことに由来しています。
床矯正の仕組み
床矯正では、主に「拡大床」と呼ばれる装置を使用します。装置にはネジがあり、それを少しずつ調整することで顎を拡大し、歯が正しく並ぶためのスペースを作っていきます。子どもの成長期に合わせて使用することで、自然な発育をサポートしながら矯正が可能です。
床矯正が用いられるケース
- 歯が生えるスペースが足りない
- 軽度〜中度の歯列不正
- 顎が小さく、永久歯が並びきらない恐れがある
- できるだけ抜歯を避けたいケース
なぜ小学生で床矯正が行われるのか?
床矯正は、顎の成長を利用できる小学生の時期に最も効果を発揮します。永久歯がすべて生え揃う中高生や大人では顎の成長が止まっているため、床矯正での大きな効果は期待できません。
小学生は「混合歯列期」と呼ばれる乳歯と永久歯が混在する時期です。この時期に床矯正を行うことで、永久歯が生えるためのスペースを事前に確保し、将来的な抜歯や大がかりな矯正治療を回避できる可能性が高まります。
小学生の床矯正のメリット
床矯正には、子どもの成長期だからこそ得られるメリットがあります。顎の骨が柔軟に動くこの時期なら、歯を無理に動かすのではなく、自然にスペースを作りながら治療を進められます。
さらに、取り外し式であるため食事や歯磨きがしやすく、衛生的に管理できる点も大きな魅力です。装置を正しく使えば、将来の治療期間や費用を抑えることができ、結果的に子どもにとっても親にとっても負担が少ない治療方法といえるでしょう。
主なメリット
- 永久歯を抜かずに矯正できる可能性が高い
- 顎の成長を利用できるため、自然で無理のない治療が可能
- 取り外し可能なため、食事や歯磨きがしやすい
- 費用が比較的抑えられる
- 早期に歯並びを改善し、自信につながる
特に「抜歯せずに済む」ことと「費用の負担が軽い」点は、多くの親御さんにとって大きな魅力です。
小学生の床矯正のデメリット
一方で、床矯正にはデメリットも存在します。最も大きいのは「本人の協力度」に強く依存する点です。1日14時間以上の装着が理想とされますが、子どもが嫌がったり忘れたりすると効果が出にくくなります。
また、効果が現れるまで時間がかかるため、すぐに成果を実感しにくいのも特徴です。加えて、装置が適応できるのは軽度〜中度の歯列不正に限られるため、重度の場合には別の治療が必要になることもあります。これらの点を理解した上で取り組むことが重要です。
主なデメリット
- 本人の装着時間に依存する(1日14時間以上が理想)
- 装置の管理を親がサポートする必要がある
- 効果が出るまで時間がかかる
- 適応できる症例が限られている
- 発音に違和感が出る場合がある
つまり、床矯正は「親子の協力が不可欠な治療」といえます。本人のやる気や習慣化が成功のカギを握ります。
小学生の床矯正の治療の流れ
床矯正を始める際には、まずカウンセリングで歯並びの状態をチェックし、治療の必要性を判断します。その後、精密検査や型取りを経て装置を作製し、実際の治療に入ります。
治療中は1〜2か月ごとに通院し、装置のネジを調整しながら少しずつ顎を広げていきます。装置の取り扱いは親子で理解し、日常生活の中で習慣化することが求められます。最終的には装置を外し、後戻りを防ぐために保定装置を使う段階に移行します。
1. 初診・カウンセリング
まずは歯科医院で歯並びや噛み合わせの状態をチェックします。治療の必要性や適応症例かどうかを判断し、治療計画を立てます。
2. 精密検査と診断
レントゲンや型取りを行い、歯列や顎の骨の状態を詳しく分析します。この診断結果をもとに装置を作製します。
3. 装置の装着
完成した床矯正装置を装着し、使用方法や装着時間について説明を受けます。親子でしっかり理解することが大切です。
4. 定期的な調整
装置のネジを定期的に回して調整し、顎の拡大や歯列の改善を進めます。歯科医院でのチェックも1〜2か月ごとに行われます。
5. 治療終了・保定
目標の歯列に近づいたら装置を外し、歯並びが後戻りしないよう保定装置を使用します。
床矯正にかかる期間と費用
床矯正の治療期間はおおよそ1〜3年が目安です。ただし、歯の状態や本人の協力度によってはさらに長くかかることもあります。治療が計画通り進むかどうかは、装置の装着時間を守れるかに大きく左右されます。
費用は20〜40万円程度が一般的で、大人のワイヤー矯正よりも比較的抑えられる傾向があります。ただし、定期的な通院費用や調整費用が別途かかる場合が多いため、事前にトータルコストを確認することが大切です。
項目 | 目安 |
---|---|
治療期間 | 1年〜3年 |
費用 | 20〜40万円程度 |
メンテナンス費用 | 数千円〜1万円/回 |
床矯正は比較的費用が抑えられる治療ですが、本人の協力度によって期間が延びる可能性がある点に注意が必要です。
床矯正で得られる効果
床矯正は単に歯をきれいに並べるだけでなく、子どもの成長全体にプラスの影響をもたらします。顎が広がることで噛み合わせが改善し、消化機能が向上するほか、発音が明瞭になる効果も期待できます。
さらに、口呼吸が改善されることや、顔のバランスが整いやすくなることも報告されています。見た目や健康の両面で子どもの自信につながり、心理的な発達にも良い影響を与える点は大きなメリットといえるでしょう。
床矯正によって得られる効果は歯並びの改善だけにとどまりません。以下のような副次的効果も期待できます。
- 噛み合わせの改善による消化機能の向上
- 発音が明瞭になる
- 口呼吸の改善
- 顔のバランスが整いやすくなる
- 心理的な自信がつく
これらの効果は成長期にしか得られないため、小学生の床矯正が注目されています。
床矯正が向いている子どもと向いていない子ども
床矯正はすべての子どもに適しているわけではありません。顎が小さく、歯の並ぶスペースが不足している子どもには向いていますが、重度の歯列不正や骨格性の問題を抱えている場合には効果が十分に得られないことがあります。
また、取り外し式の装置を長時間装着できない子どもには不向きです。本人の協力度や生活習慣も判断材料となるため、事前に歯科医師としっかり相談することが重要です。
床矯正が向いている子ども
- 顎が小さく歯が並ぶスペースが不足している
- 比較的軽度の歯列不正
- 親や本人が治療に協力的
床矯正が向いていない子ども
- 重度の歯列不正や骨格性の問題がある
- 装置を長時間装着できない
- 中学生以上で顎の成長がほぼ完了している
よくある質問(床矯正・小学生)
Q1. 床矯正とは何ですか?
取り外し式の装置で顎の幅を少しずつ拡大し、永久歯が並ぶスペースを確保する小児向け矯正です。成長を利用して土台(顎)を整えるのが目的です。
Q2. 何歳から始めるのがよいですか?
混合歯列期が始まる6~8歳が一つの目安です。6歳臼歯や前歯の生え替わりを確認し、顎の成長を活かせる時期に始めると効果が高まります。
Q3. 1日にどのくらい装着する必要がありますか?
目安は1日14時間以上(就寝時+在宅時間)。装着時間が短いと効果が出にくく、治療期間が延びる原因になります。
Q4. 治療期間はどのくらいですか?
症例と装着時間の遵守度により異なりますが、一般的に1~3年が目安です。その後、歯並びの後戻りを防ぐために保定が必要です。
Q5. 痛みはありますか?
調整直後に軽い圧迫感や違和感を感じることがありますが、多くは数日で慣れます。強い痛みが続く場合は装着を無理せず、医院に相談してください。
Q6. 食事や歯磨きはどうすればよいですか?
取り外して食事・歯磨きができます。装置は柔らかいブラシと中性洗剤で清掃し、熱湯は変形の原因になるため避けてください。
Q7. 費用の相場はどのくらいですか?
医院や装置により差はありますが、一次矯正として20~40万円前後が一般的です。調整・メンテナンス費用が別途かかる場合があります。
Q8. 学校やスポーツに影響はありますか?
多くは問題なく続けられます。競技中は外す運用も可能ですが、装着時間が不足しないよう計画的に管理してください。
Q9. 装置の装着を忘れたらどうなりますか?
効果が落ち、治療が長引く原因になります。スケジュール表やアラームで習慣化し、記録アプリなどの「見える化」が有効です。
Q10. 床矯正で必ず抜歯を避けられますか?
抜歯回避の可能性は高まりますが、骨格や叢生の程度によっては将来ワイヤー矯正や抜歯が必要になるケースもあります。診断が重要です。
Q11. どんな症例でも床矯正は適応できますか?
重度の骨格性不正や開咬・反対咬合の程度によっては、他の治療(機能的装置、固定式矯正、外科的矯正)が適します。適応評価は専門医へ。
Q12. 保険は使えますか?
原則として自由診療です(保険適用は特定の先天異常などに限られます)。支払い方法やトータル費用は事前に確認しましょう。
まとめ
小学生の床矯正は、成長期の顎を利用して自然に歯並びを整える効果的な治療法です。メリットが多い一方で、本人の協力度や症例の適応範囲といった制約もあるため、すべての子どもに向いているわけではありません。
親としてはメリットとデメリットを理解したうえで、子どもの成長段階や性格を考慮し、適切な時期に専門医へ相談することが大切です。将来の健康と自信ある笑顔のために、床矯正という選択肢をしっかり検討しましょう。