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生活習慣・機能改善

顎関節症とは?症状セルフチェック・原因・歯科での治療法を徹底解説

生活習慣・機能改善 顎関節症とは?症状セルフチェック・原因・歯科での治療法を徹底解説 みんなの歯科navi

大きく口を開けたときに顎がカクッと鳴る。あくびをすると顎の付け根が痛む。指が縦に3本入らない——こうした症状に心当たりがあれば、顎関節症の可能性があります。決して珍しい状態ではなく、程度の差はあれ多くの人が生涯のどこかで経験するとされています。

ただし、顎関節症をめぐる情報には混乱があります。「噛み合わせが悪いから」「矯正すれば治る」といった説明を目にした方もいるでしょう。実際には原因はひとつに定まらず、複数の要因が積み重なって発症すると考えられており、治療も歯を削ったり並べ替えたりする前に、体に負担の少ない方法から始めるのが標準的な進め方です。この記事では、顎関節の構造から症状のセルフチェック、原因の考え方、歯科で行う検査と治療、そして受診の目安までを図解と比較表で整理します。

この記事の要点
  • 顎関節症の3大症状は顎の痛み・関節の音・口が開けにくいこと。音だけで痛みがなければ経過を見る場合もあります。
  • 正常な開口量の目安は指が縦に3本入る(約40mm以上)。ここを下回るなら開口障害として扱われます。
  • 原因は単一ではなく、上下の歯を接触させる癖・食いしばり・姿勢・ストレス・外傷などが積み重なって発症すると考えられています。
  • 治療は元に戻せる方法から。生活指導とセルフケアが第一で、いきなり歯を削る咬合調整や矯正は初期治療として推奨されません。
  • 受診先は歯科・歯科口腔外科。多くは保険適用で、スプリント(マウスピース)も保険で作製できます。

顎関節症とは何か

顎関節は、耳のすぐ前にある関節です。下顎の骨の先端(下顎頭)が頭蓋骨のくぼみにはまり込む構造をしていて、その間には関節円板というクッションの役割をする軟らかい組織が挟まっています。口を開けるとき、下顎頭は単に回転するだけでなく前方に滑り出します。この複雑な動きを、関節円板が位置を変えながら支えています。

顎関節症とは、この関節そのものや周囲の筋肉に痛みが生じたり、関節円板の位置がずれて音が鳴ったり、口が開けにくくなったりする状態の総称です。ひとつの病気を指す名前ではなく、似た症状を示すいくつかの状態をまとめた診断名である点が特徴です。そのため、同じ「顎関節症」と診断されても、人によって主な問題が筋肉にあるのか関節にあるのかは異なります。

図解① 顎関節の構造と、音が鳴る仕組み 顎関節の構造 頭蓋骨(下顎窩) 関節円板 下顎頭 正常な位置関係 前方へずれる カクッ 円板がずれた状態
模式図です。ずれた関節円板を下顎頭が乗り越えるときに、クリック音として感じられることがあります。

3大症状とセルフチェック

顎関節症の症状は大きく三つに整理されます。すべてが揃うとは限らず、どれか一つだけの場合もあります。

症状具体的な感じ方確認の仕方受診の必要度
顎の痛み口を開けるとき、噛むときに関節や頬が痛む耳の前を指で押して痛むか。噛みしめて頬が痛むか高い
関節の音カクッ、ポキッという音。ジャリジャリという音耳の前に指を当てて口を開閉する痛みがなければ経過観察も
口が開けにくい大きく開かない、途中で引っかかる指が縦に3本入るか(約40mm)高い
目安です。症状の程度や組み合わせによって対応は変わります。

自分で確認しやすいのが開口量です。人差し指・中指・薬指の3本を縦に揃えて口に入れてみてください。すんなり入れば開口量はおおむね正常とされます。2本しか入らない、あるいは入れようとすると痛むという場合は、開口障害の可能性があります。

図解② 開口量のセルフチェック 開口量の確認 指3本 入る 約40mm以上・目安は正常 2本まで 入らない 開口障害の可能性・受診を ※無理に開こうとしないでください。 痛みが出るところで止めて確認します。
痛みを我慢して開くと状態を悪化させることがあります。あくまで軽く確認する程度にとどめてください。

なお、音だけがあって痛みも開口障害もない場合、必ずしもすぐに治療が必要とは限りません。ただし音が「ジャリジャリ」という擦れるような質に変わった、あるいは音が消えたと思ったら開かなくなったという変化は、状態が進んだサインとして扱われます。

原因はひとつではない

かつては「噛み合わせが悪いことが顎関節症の原因」と説明されることがありました。しかし現在では、単一の原因で起こるものではなく、複数の要因が積み重なって、その人の耐えられる限界を超えたときに症状として現れるという考え方が一般的です。同じ噛み合わせでも症状が出る人と出ない人がいるのはこのためです。

要因内容自分で変えられるか
上下の歯を接触させる癖日中、無意識に上下の歯を触れさせ続けている気づけば変えられる
食いしばり・歯ぎしり強い力が顎関節と筋肉に長時間かかる装置と生活の工夫で軽減できる
姿勢長時間の前傾姿勢、頬杖、うつ伏せ寝変えられる
精神的な緊張筋肉の緊張が持続する影響を減らす工夫は可能
外傷顎をぶつけた、長時間の開口(治療・あくび)予防的な配慮は可能
関節や筋肉の個人差もともとの構造的な弱さ変えられない
噛み合わせ要因のひとつだが、単独の原因とは考えられていない安易な調整は推奨されない
どの要因がどの程度関わるかは人によって異なります。診察で優先順位を確認することが大切です。

この中で特に見落とされやすいのが最上段です。本来、上下の歯が接触しているのは食事や会話の瞬間だけで、1日の合計は20分程度とされています。ところがパソコン作業や運転などに集中していると、無意識に上下の歯を触れさせたままにしている人が少なくありません。歯が触れているだけで顎の筋肉は働き続け、その積み重ねが症状につながります。食いしばりと歯への影響は食いしばり・ストレスで知覚過敏になる?くさび状欠損との関係でも扱っています。

歯科で行う検査

受診すると、まず問診と診察で状態を把握します。特別な準備は不要で、多くは初診の日のうちに方針が示されます。

検査分かること
問診いつから、どんなとき、生活習慣、外傷歴
触診顎関節と咀嚼筋のどこに痛みがあるか
開口量の測定何ミリ開くか。左右にずれずに開けるか
関節音の確認音の種類とタイミング
パノラマレントゲン骨の形の変化、他の疾患の除外
CT・MRI(必要時)骨の詳細、関節円板の位置
MRIは関節円板の状態を見るために大学病院等へ紹介されることがあります。

検査の目的は、顎関節症かどうかの判断に加えて他の病気ではないことを確かめることにもあります。顎の痛みは、親知らずの炎症や副鼻腔の疾患、まれに腫瘍などでも起こるためです。自己判断で顎関節症と決めつけないほうがよい理由がここにあります。

治療は「元に戻せる方法」から

顎関節症の治療で最も重要な原則が、可逆的(元に戻せる)で体への負担が小さい方法から始めるということです。歯を削る、被せ物をやり直す、矯正するといった不可逆的な処置を初期治療として行うことは、現在では推奨されていません。多くの症例が保存的な方法で改善するためです。

段階内容ねらい保険
第1段階患者教育・セルフケア指導上下の歯を接触させる癖など、原因となる行動を減らす適用
第2段階理学療法(運動療法・温める・マッサージ)筋肉の緊張を和らげ、動きを取り戻す適用
第3段階スプリント療法(マウスピース)歯と関節を守り、筋の緊張を緩める適用
第4段階薬物療法(消炎鎮痛薬・筋弛緩薬)痛みと筋の緊張を抑える適用
例外的関節腔洗浄・外科的処置保存療法で改善しない一部の症例症例による
実際の進め方は診断内容によって異なります。費用や保険適用は受診先でご確認ください。

治療の流れと期間の詳細は顎関節症の治し方|歯科で行う治療の流れと期間に、スプリントについては顎関節症のスプリント(マウスピース)治療|効果・費用・保険にまとめました。自分でできることは顎関節症のセルフケア|マッサージ・ストレッチの正しいやり方と限界をご覧ください。

やってはいけないこと

よかれと思った行動が状態を悪化させることがあります。特に次の点には注意してください。

  • 音を鳴らそうとして顎を動かす:関節円板と周囲の組織に負担をかけます。
  • 痛みを我慢して大きく開ける:無理な開口は炎症を強めることがあります。
  • 硬いものを噛んで鍛えようとする:顎の筋肉は鍛える対象ではありません。
  • 強く押すマッサージを続ける:筋肉を傷めて痛みが増すことがあります。
  • 診断を受けずに咬合調整や矯正を始める:不可逆的な処置は初期治療として推奨されません。

避けるべき行動の全体像は顎関節症でやってはいけないこと8つで詳しく解説しています。放置した場合にどうなるかは顎関節症を放置するとどうなる?「手遅れ」と言われる状態をご覧ください。

顎関節症と間違えやすい症状

顎のあたりの痛みは、顎関節症以外の原因でも起こります。自己判断で顎関節症と決めつけると、別の病気の発見が遅れることがあります。検査の目的のひとつが、これらを除外することです。

紛らわしい原因特徴的な症状顎関節症との違い
親知らずの周囲の炎症奥歯の奥が腫れて痛む。口が開けにくくなる腫れや発熱を伴う。特定の部位に限局する
むし歯・歯の根の炎症特定の歯がしみる、噛むと痛む顎の開閉より、歯そのものの刺激で痛む
副鼻腔の疾患頬の奥が重く痛む。鼻症状を伴う顎を動かしても変化しにくい
耳の疾患耳の痛み、難聴、耳だれ顎の動きと痛みが連動しない
神経の痛み電気が走るような鋭い痛みが一瞬走る持続時間と痛みの質が異なる
頸部・肩の筋肉の緊張首や肩のこりから頭部まで広がる痛み顎の開閉制限を伴わないことが多い
実際には複数が重なっていることもあります。判断は診察と検査によります。

特に注意したいのが最上段です。親知らずの周囲に炎症が起きると口が開けにくくなり、顎関節症とよく似た状態になります。腫れや発熱を伴う場合は、顎関節症ではなく感染を疑うのが原則です。親知らずのトラブルについては親知らずの虫歯・歯ぐきの腫れ|応急処置と受診タイミングで扱っています。

日常でできる負担の減らし方

顎関節症は、日々の小さな負担が積み重なって発症します。裏を返せば、その負担を減らす行動が予防にも改善にもつながります。治療を受けている方も、症状が出ていない方も共通して有効です。

場面意識したいこと理由
デスクワーク中上下の歯が触れていないか確認する接触しているだけで筋肉が働き続ける
就寝時うつ伏せ寝を避け、枕の高さを見直す頭の重みが顎にかかり続ける
食事一口を小さくし、左右均等に噛む片側への偏りを防ぐ
あくび・歯科治療時大きく開けすぎない。長時間の開口を避ける関節への急な負荷を減らす
スマホ操作下を向き続けない。目線の高さに近づける前傾姿勢が首と顎の筋肉を緊張させる
ストレスがかかる時期休息と睡眠を優先する緊張が筋肉のこわばりにつながる
スポーツ時食いしばる場面が多いなら装置を検討強い力が繰り返し加わる
すべてを一度に変える必要はありません。当てはまるものから始めてください。

この中で最も効果が期待できるのは最上段です。本来、上下の歯が触れているのは1日20分程度とされます。目に何度も入る場所に小さな印を貼り、見るたびに歯が離れているかを確認する習慣をつくると、無意識の癖に気づく回数が増えていきます。費用もかからず今日から始められる方法です。具体的なやり方は顎関節症のセルフケア|マッサージ・ストレッチの正しいやり方と限界で解説しています。

受診の目安と受診先

次に当てはまる場合は、様子を見るより一度受診することをおすすめします。

状況対応
口が指2本分しか開かない早めに受診
食事のたびに痛む受診
顎が引っかかって動かせない早めに受診
頭痛や肩こりを伴う受診して相談
症状が2週間以上続いている受診
音だけで痛みも開口障害もない経過を見てもよい。悪化すれば受診
迷う場合は受診を選んでください。多くは保険の範囲で相談できます。

受診先は歯科・歯科口腔外科が基本になります。どこを選べばよいかは顎関節症は何科に行く?歯科・口腔外科・整形外科の選び方で整理しました。噛み合わせや矯正との関係は顎関節症と噛み合わせ・矯正の関係|保険適用になる条件をご覧ください。歯ぎしりが関わる場合は歯医者で治せる歯ぎしりとマウスピース治療も参考になります。通える範囲の歯科医院はエリアから探すことができます。

まとめ

顎関節症は、顎の痛み・関節の音・口が開けにくいという三つの症状を主とする状態の総称です。原因はひとつに定まらず、上下の歯を接触させる癖、食いしばり、姿勢、精神的な緊張などが積み重なって発症すると考えられています。「噛み合わせが悪いから」という単純な説明で片づけられるものではありません。

治療は、元に戻せる方法から段階的に進めるのが原則です。生活習慣の見直しとセルフケアが第一で、必要に応じてスプリントや薬が加わります。歯を削る、矯正するといった不可逆的な処置を初期治療として行うことは推奨されていません。まずは指が3本入るかを確かめ、開口障害や食事に支障がある痛みがあれば、歯科・歯科口腔外科で相談してみてください。多くは保険の範囲で対応できます。

よくある質問

Q
顎が鳴るだけで痛くありません。受診は必要ですか?
A

音だけで痛みも開口障害もない場合、すぐに治療が必要とは限らず、経過を見ることもあります。ただし音の質が「カクッ」から「ジャリジャリ」という擦れるようなものに変わった、音が消えたと思ったら口が開かなくなった、といった変化は状態が進んだサインとして扱われます。気になる場合は一度診てもらうと安心です。

Q
顎関節症は自然に治りますか?
A

軽度であれば、原因となっている癖や負担が減ることで自然に軽快することがあります。ただし食いしばりや上下の歯を接触させる癖が続いていれば、症状も続きます。開口障害がある、食事のたびに痛むという状態は自然経過に任せず受診してください。放置すると動きの制限が固定化することがあります。

Q
何科を受診すればよいですか?
A

歯科または歯科口腔外科が基本です。顎関節と咀嚼筋、噛み合わせを一体として診られるのが歯科領域だからです。開口障害が強い、腫れがある、外傷後といった場合は大学病院の口腔外科を紹介されることがあります。整形外科や耳鼻科は、他の疾患が疑われる場合の受診先になります。

Q
顎関節症の治療に保険は使えますか?
A

使えます。診察・検査、セルフケアの指導、スプリント(マウスピース)の作製、薬物療法などは保険適用の範囲で受けられるのが一般的です。MRI撮影が必要な場合も保険が適用されます。適用の可否や自己負担額は診断内容と医療機関によって異なりますので、受診時にご確認ください。

Q
噛み合わせを治せば顎関節症は治りますか?
A

噛み合わせは要因のひとつと考えられていますが、単独の原因とはされていません。同じ噛み合わせでも症状が出る人と出ない人がいるためです。現在は、歯を削る咬合調整や矯正といった元に戻せない処置を初期治療として行うことは推奨されておらず、まずセルフケアやスプリントなど保存的な方法から進めるのが標準的です。

Q
どのくらいで治りますか?
A

症状の程度と原因によって幅があります。筋肉の緊張が主体で原因となる癖を減らせた場合、数週間から数か月で楽になることが多いとされます。関節円板のずれが関わる場合や症状が長く続いている場合は、より時間がかかります。いずれにせよ、原因となる習慣が続いていれば再発しやすい点は共通しています。

Q
上下の歯が触れているのは普通ではないのですか?
A

普通ではありません。本来、上下の歯が接触しているのは食事や会話の瞬間だけで、1日の合計は20分程度とされています。それ以外の時間は上下の歯がわずかに離れているのが安静な状態です。気づいたときに歯が触れているなら、それだけで顎の筋肉が働き続けていることになり、症状の一因になり得ます。

Q
顎関節症で顔がゆがむことはありますか?
A

片側だけで噛む癖が続くと左右の筋肉の使われ方に差が生じ、見た目の印象が変わったと感じることはあり得ます。ただし骨格そのものが短期間で変形するわけではありません。心配な場合も、自己流のマッサージや矯正に飛びつく前に、まず診察を受けて何が起きているかを確かめることをおすすめします。

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