「どれくらい費用がかかるのか」を把握できると、無理のない計画が立てやすくなります。本記事は、ホワイトニング・セラミック・矯正・歯ぐきの形成・インプラント審美など、主要メニューの相場レンジと費用が変動する要因を整理した実務ガイドです。
相場は範囲(本数)・材料ランク・工程(仮歯/試適/色合わせ)・保証/再製作条件・メンテ頻度で大きく動きます。比較は「一式いくら」ではなく、内訳と総額を前提に行いましょう。
相場の見方と注意点(総論)
同じ名称の治療でも、医院によって含まれる工程が異なります。たとえばセラミックでは、仮歯・写真撮影・色合わせ来院・接着法・保証などが価格に含まれるかどうかで総額が変わります。矯正は装置料と調整料の分け方、保定(リテーナー)費用の扱いを必ず確認しましょう。
金額だけでなく、治療の侵襲度・将来の維持費・再治療の条件まで含めて意思決定するのがコツです。短期の安さより、長期の安定と支払い計画(分割/デンタルローン/医療費控除の可否)を基準にしましょう。
費用が変わる主な要因
材料(透過/強度ランク)、技工士のグレード、工程数(試適・色合わせ)、本数/範囲、咬合や歯周の前処置、カスタムアバットメント等のオプションが総額を左右します。
見積比較のコツ
「基本料+工程+再診/調整+保証+メンテ」を横並びで。追加費用が出る条件(再製作、破損、色の再調整)を必ず書面で確認しましょう。
ホワイトニングの費用相場
ホワイトニングは、オフィス(院内)・ホーム(マウスピース)・デュアルの3系統が基本です。白さの到達度と持続性は歯質・濃度・回数・生活習慣で変わります。イベントまでの期間や希望の白さから逆算して選択します。
追加のジェルやタッチアップ、知覚過敏抑制剤、色戻り後のメンテナンス費も見込んでおくと計画が安定します。
方式 | 相場(税込目安) | 回数/期間 | 備考 |
---|---|---|---|
オフィス | 15,000〜40,000円/回 | 1〜3回/数週 | 即効性◎、色戻り対策にホーム併用推奨 |
ホーム(トレー) | 20,000〜40,000円(初回一式) | 1〜2週間/日中or就寝時 | 追加ジェル3,000〜8,000円/本 |
デュアル | 50,000〜100,000円 | 2〜4週 | 到達度と持続性のバランス◎ |
方式選びのポイント
短期イベントはオフィス、持続重視はホーム、両立はデュアル。既存の補綴は白くならないため、順番設計が重要です。
追加費の目安
知覚過敏対策材1,000〜3,000円、色戻りタッチアップ10,000〜30,000円程度が一般的です。
セラミック修復(クラウン/インレー/ベニア)の相場
前歯・臼歯ともにオールセラミック(e.max等)・ジルコニア系が主流です。見た目(層状築盛/多層ブロック)と強度(フルジルコニア/高透過)で価格帯が変わります。色合わせや仮歯、写真撮影の有無もチェックしましょう。
咬合力が強い・噛みしめがある場合は、設計(厚み/マージン)とナイトガードの有無が寿命と総額に影響します。
項目 | 相場(税込目安) | 対象/備考 |
---|---|---|
セラミックインレー | 30,000〜80,000円/歯 | 小〜中範囲の詰め物 |
オールセラミッククラウン(e.max等) | 80,000〜150,000円/歯 | 審美性重視、前歯で人気 |
ジルコニアクラウン | 90,000〜180,000円/歯 | 強度重視。審美層状築盛は上限寄り |
ラミネートベニア | 80,000〜150,000円/歯 | 前歯表面に貼る薄いセラミック |
素材選びの目安
前歯は透明感のe.maxや積層ジルコニア、奥歯は強度が高いフルジルコニアが現実的。写真・シェードで仕上がりを共有しましょう。
前歯と奥歯の費用差
前歯は審美工程(色合わせ/試適)が増え、同素材でも上限寄りになりがちです。
ラミネートベニア/ダイレクトボンディングの相場
短期で形態や隙間を整えたい場合、ダイレクトボンディング(樹脂)とベニア(セラミック)が選択肢です。前者は低侵襲・即日が魅力、後者は色安定と質感で優れます。清掃性を損ねない形態設計が鍵です。
広範囲や強い変色にはベニアが有利、微修正や若年者はダイレクトで様子を見るなど、段階的戦略がコスパを高めます。
治療 | 相場(税込目安) | 特徴/備考 |
---|---|---|
ダイレクトボンディング | 10,000〜80,000円/歯 | 範囲・複雑度で幅。メンテ/研磨前提 |
ラミネートベニア | 80,000〜150,000円/歯 | 色安定◎、前歯の審美に強い |
向き不向き
小範囲・辺縁部はダイレクト、大幅な形態/色改善はベニアが現実的。削除量と長期維持で選びます。
矯正治療(マウスピース/表側/裏側/部分)の相場
矯正は総額の定義(装置料+調整料+保定)が医院により異なります。追加アタッチメント・ミニスクリュー(TADs)・抜歯の有無でも費用が変わるため、費用の内訳と保定費を必ず確認しましょう。
就業・学校との両立、見た目や痛み・発音への配慮など、装置選びは生活と優先度から逆算します。
装置 | 相場(税込目安) | 期間目安 | 備考 |
---|---|---|---|
表側ワイヤー(メタル/審美) | 600,000〜1,000,000円 | 1〜3年 | 調整料が別の場合あり(月3,000〜10,000円) |
裏側(リンガル) | 1,000,000〜1,500,000円 | 1.5〜3年 | 見えにくいが高額・難易度高 |
マウスピース矯正 | 600,000〜1,200,000円 | 0.5〜2年 | 範囲と難易度で大きく変動 |
部分矯正(前歯部など) | 100,000〜400,000円 | 3〜12か月 | 適応を慎重に評価 |
保定(リテーナー) | 30,000〜100,000円(上下) | 2年〜長期 | 再製・紛失時の費用も確認 |
装置選びの要点
審美性・通院頻度・自己管理の可否・痛みの許容度を整理。見た目優先なら裏側/マウスピース、速度と確実性はワイヤーが有利です。
部分矯正と保定費
部分は総額が抑えられる一方、保定は同様に必要。後戻り対策の運用が費用対効果を左右します。
歯ぐきの審美(ガミースマイル/黒ずみ/歯冠長延長)の相場
歯肉の色やラインは笑顔の印象を大きく左右します。レーザーの色素除去・歯冠長延長術・リップリポジショニング・結合組織移植など、原因に応じて選択します。複合要因では段階的併用が現実的です。
手術はダウンタイムの確保が必要。色素除去は再沈着の可能性があり、生活習慣(喫煙/口呼吸)への介入も計画に含めましょう。
処置 | 相場(税込目安) | 備考 |
---|---|---|
レーザーでの黒ずみ除去 | 20,000〜60,000円/回 | 1〜3回想定、タッチアップあり |
歯冠長延長術(歯肉/骨整形) | 30,000〜150,000円/歯 | 前歯部は上限寄りになりやすい |
リップリポジショニング | 150,000〜400,000円 | 上唇挙上過活動への外科的対応 |
結合組織移植(歯肉ボリューム) | 50,000〜150,000円/部位 | インプラント周囲審美にも有効 |
再発予防のポイント
炎症コントロール・保湿・禁煙・適切な清掃で安定化。色素系は生活指導と定期メンテが鍵です。
インプラント(審美領域)の相場
前歯部のインプラントは外観要求と軟組織の難易度が高く、臼歯より高額になりやすい領域です。骨造成(GBR)や軟組織移植、カスタムアバットメント、暫間歯の有無で総額が変わります。
保証条件(破損/スクリュー緩み/脱離)や、メンテ来院の要件を事前に確認し、将来のやり替え費も想定しておくと安心です。
項目 | 相場(税込目安) | 備考 |
---|---|---|
前歯部インプラント(1歯) | 300,000〜600,000円 | 手術〜上部構造までのパッケージ目安 |
カスタムアバットメント | 50,000〜100,000円 | 形態/清掃性を最適化 |
暫間補綴(プロビ) | 20,000〜50,000円 | 軟組織の立ち上げに有用 |
GBR(骨造成) | 50,000〜150,000円/部位 | 欠損量で変動 |
軟組織移植 | 50,000〜150,000円/部位 | 審美安定に寄与 |
内訳の見極め
「手術料に何が含まれるか」「上部構造の素材」「再来/調整/保証」の境界を明確にしましょう。
メンテナンス・追加費用の相場
仕上がりを長持ちさせるには、ホームケア+プロケア+保護装置の三本柱が不可欠です。メンテ費を計画に織り込むことで、再治療サイクルを伸ばし、総額の最適化につながります。
ホワイトニングやダイレクトはタッチアップ前提、矯正は保定の長期運用が基本です。破損・紛失時の費用も事前共有を。
項目 | 相場(税込目安) | 頻度/備考 |
---|---|---|
PMTC/メンテ | 6,000〜15,000円/回 | 3〜6か月 |
ホワイトニング追加ジェル | 3,000〜8,000円/本 | 色戻り時 |
ナイトガード | 20,000〜40,000円 | 咬耗/破折予防 |
リテーナー再製(上下) | 20,000〜60,000円 | 破損・紛失時 |
写真/シミュレーション | 5,000〜20,000円/撮影、10,000〜50,000円/DSD | 工程に含む医院も |
長期費用を抑えるコツ
最小介入・適切な厚み/咬合・保護装置・定期プロケア。トラブルの早期補修が再治療コストを最小化します。
早見表:目的別の「最低〜理想」コスト帯
短期で印象を上げたいのか、長期に根本改善を狙うのかで、合理的な投資額は変わります。以下は意思決定の当たりを付けるための目安です(個別診断で最適解は変わります)。
複数案(ミニマムプラン/スタンダード/プレミアム)を比較し、期間・審美・清掃性・メンテ性の4軸で選ぶのがおすすめです。
目的 | ミニマム | スタンダード | プレミアム |
---|---|---|---|
短期の印象UP | オフィス1回:15,000〜40,000円 | デュアル:50,000〜100,000円 | ベニア1〜2歯:80,000〜300,000円 |
前歯の総合審美 | ダイレクト微修正:10,000〜160,000円 | e.maxクラウン2〜4歯:160,000〜600,000円 | 矯正+セラミック:800,000〜1,800,000円 |
全体の咬合と見た目 | 部分矯正:100,000〜400,000円 | 表側/マウスピース:600,000〜1,200,000円 | 裏側:1,000,000〜1,500,000円 |
予算別の賢い組み合わせ
まずはホワイトニング+ダイレクトで土台を整え、必要部位のみセラミックへ。期限が許せば矯正を先に行うと削る量を減らせます。
まとめ:内訳の透明性×長期視点で総額を最適化
相場はあくまで目安で、内訳の何を含むかで総額が変わります。工程・保証・メンテ費・追加条件まで可視化し、同条件で比較しましょう。短期の“安さ”より、やり直しを減らす設計が結果的に最安です。
迷ったら、同じ計画で2院以上の見積を取り、説明の一貫性と納得度で選ぶのが近道。あなたの「目的・期間・予算・メンテ習慣」に合ったプランなら、見た目も健康も長く保ちやすくなります。
よくある質問(審美歯科の費用相場)
Q1. 相場はどのくらい信用できますか?
相場は目安です。医院の設備・材料ランク・技工士グレード・工程(仮歯/試適/色合わせ)・保証の有無で総額は大きく変わります。同条件で2院以上の見積比較がおすすめです。
Q2. 見積で必ず確認すべき内訳は?
「基本料+工程費(仮歯/試適/色合わせ)+調整/再診+保証/再製作条件+メンテ費(PMTC・保定・ナイトガード)」の5点。追加費用が発生する条件を必ず書面で確認しましょう。
Q3. ホワイトニングはどれを選ぶとコスパが良い?
短期の見た目重視はオフィス、持続重視はホーム、両立はデュアル。既存補綴は白くならないため、順番設計(先にホワイトニング→補綴の色合わせ)が無駄を減らします。
Q4. セラミックの価格差はなぜ大きい?
材料の種類(e.max/ジルコニア等)、築盛の有無、色合わせ工程、技工所のグレード、保証条件が影響します。前歯は審美工程が増え、臼歯より高くなりがちです。
Q5. 矯正費用は「総額」と「月額」どちらで見る?
総額で比較が基本です。装置料・毎月の調整料・保定費・紛失/再製の費用まで含めて並べると、装置間の実質差が見えます。分割払い条件もあわせて確認しましょう。
Q6. インプラント前歯が高額になる理由は?
審美要求と軟組織マネジメントの難易度が高く、暫間補綴・カスタムアバットメント・骨/歯肉移植などの追加工程が入りやすいため。何が含まれるかの境界確認が重要です。
Q7. メンテ費はどのくらい見込むべき?
PMTCは3〜6か月ごとに6,000〜15,000円程度、ナイトガード2〜4万円、リテーナー再製2〜6万円が目安。タッチアップ費(ホワイトニング/ダイレクト)も計画に入れましょう。
Q8. 安く見える見積の注意点は?
抜けている工程が後から加算されることがあります。写真・試適・色合わせ・再調整・保証の範囲と、追加発生条件の明文化が不可欠です。
Q9. 医療費控除や分割払いは使えますか?
控除の対象かは治療内容や要件によります。分割・デンタルローンの取り扱い、手数料、途中解約の条件を医院で確認してください(条件は各院で異なります)。
Q10. 予算が限られるときの賢い優先順位は?
「最小介入→段階的」を基本に、まずホワイトニング+ダイレクトで土台を整え、必要部位だけセラミックへ。長期なら先に矯正で削る量を減らすとトータルコストを抑えやすくなります。