「子どもの噛み合わせが逆になっている気がする」「受け口は自然に治るの?それとも矯正が必要?」と悩む親御さんは少なくありません。反対咬合(受け口)は、上の前歯より下の前歯が前に出ている状態を指し、専門的には「下顎前突」と呼ばれます。
この症状は単なる見た目の問題にとどまらず、噛み合わせ、発音、顎の成長にも影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、子どもの反対咬合について、原因や影響、学年ごとの治療タイミング、よく用いられる矯正法、治療期間や費用の目安まで徹底解説します。
反対咬合(受け口)とは?
反対咬合とは、下の前歯が上の前歯より前に出てしまう噛み合わせのことを指します。日本人の約1割程度にみられるとされており、決して珍しい症状ではありません。
乳歯列期に一時的に見られるケースもありますが、多くの場合は自然に改善することはなく、成長とともに症状が悪化する可能性があります。
見た目のコンプレックスにつながるだけでなく、咀嚼や発音に支障をきたすこともあります。また、下顎が過度に成長すると顔貌のバランスにも影響を与え、将来的に外科手術が必要となるケースもあるため、早期の対応が重要です。
反対咬合の原因
反対咬合の原因は一つではなく、複数の要因が組み合わさって起こることがほとんどです。大きく分けると「骨格性」「歯性」「機能性」の3つの要素が挙げられます。それぞれの原因を理解することで、治療の方針を立てやすくなります。
例えば骨格性では、上顎の発育不足や下顎の過成長が大きな要因となります。遺伝的な影響も強いため、親が受け口の場合、子どもも同じ傾向を持ちやすいといわれています。一方、歯性の場合は歯の傾きや位置異常が主な原因であり、比較的軽度のケースが多く、早期の矯正で改善できることがあります。
機能性の要因では、舌の癖や口呼吸などが影響する場合があります。これらは成長期の顎の発育を阻害し、歯列や噛み合わせに悪影響を及ぼすため、習慣の改善と並行して治療を行う必要があります。
主な要因は大きく分けて以下の3つです。
骨格性の要因
顎の骨の成長バランスに問題があるケースです。上顎の成長が不十分、または下顎の成長が過剰な場合に反対咬合が生じます。遺伝的な要素も強く、両親のどちらかが受け口の場合、子どもも同じ症状になりやすいといわれています。
歯性の要因
顎の骨に問題がなくても、歯の生える位置や角度が原因で受け口になることがあります。例えば、下の前歯が前に傾斜して生えている、または上の前歯が内側に傾斜している場合です。歯性の反対咬合は比較的軽度なことが多く、早期治療で改善できる可能性が高いとされています。
機能性の要因
舌の癖や口呼吸、指しゃぶりなど、生活習慣や癖が影響して反対咬合になる場合もあります。これらの要因は顎の成長や歯の位置に悪影響を及ぼし、放置すると症状を悪化させる恐れがあります。早期に習慣を改善することが大切です。
反対咬合がもたらす影響
反対咬合は見た目の問題にとどまらず、日常生活や将来の健康に多大な影響を及ぼします。例えば咀嚼効率が悪くなり、食べ物をしっかり噛めないことで消化に負担をかける可能性があります。また、発音の不明瞭さから学習やコミュニケーションに影響が出ることもあります。
さらに、顎の成長に偏りが生じることで顔貌全体のバランスが崩れ、心理的なコンプレックスにつながることも少なくありません。こうした影響は年齢が上がるほど深刻化しやすく、改善が難しくなるため、できるだけ早期に対処することが望まれます。
- 咀嚼への影響:噛み合わせが悪く、食べ物をしっかり噛めない。
- 発音への影響:サ行・タ行などが不明瞭になりやすい。
- 口腔機能への影響:口呼吸や舌癖を助長しやすい。
- 顔貌への影響:下顎が突出した顔立ちになる。
これらの影響は成長とともに顕著になるため、症状に気づいた時点で歯科医院に相談することが重要です。
学年ごとの治療タイミング
反対咬合の治療は、子どもの学年や成長段階によって適切な時期が異なります。治療の目的も、幼児期と中学生では大きく変わるため、学年ごとの目安を知っておくことが重要です。
幼児期(3〜5歳)は、まだ自然改善の可能性も残されていますが、骨格性の強い症状はこの時期から治療が推奨されます。小学校低学年(1〜3年生)は顎の成長を利用できる絶好のタイミングであり、拡大床や機能的矯正装置を用いた基礎的な治療が多く行われます。
小学校高学年から中学生になると、永久歯がそろい始めるため、本格的な矯正治療が必要になるケースが増えます。場合によっては、成長が落ち着いた後に外科的な治療を併用する可能性も出てくるため、より計画的な対応が求められます。
幼児期(3〜5歳)
この時期に反対咬合が見られる場合、自然に改善するケースもありますが、多くは矯正治療が必要になります。特に骨格性の要因が強い場合は早期に介入することが推奨されます。
小学校低学年(1〜3年生)
混合歯列期に入るため、反対咬合の治療を開始する適齢期の一つです。拡大床や機能的矯正装置を使い、顎の成長をコントロールすることで改善を目指します。
治療期間は1〜2年程度が一般的です。
小学校高学年(4〜6年生)〜中学生
永久歯が生えそろう時期に差し掛かるため、本格的な矯正治療が必要になる場合があります。骨格性の問題が大きい場合、この時期では矯正単独での改善が難しくなることもあります。
症例によっては外科手術の併用を視野に入れることもあります。
子どもの反対咬合に多い矯正法
反対咬合の治療には、子どもの年齢や症状の程度に応じたさまざまな装置が用いられます。取り外し式の装置から固定式のものまで幅広く、顎の成長段階や生活習慣に合わせて選択されます。
プレオルソのようなマウスピース型装置は比較的軽度の症例に有効であり、子どもにとって装着しやすいのが特徴です。拡大床は上顎を広げて歯が正しく並ぶスペースを確保するために使われます。骨格性の症例では、チンキャップのように下顎の成長を抑制する装置が用いられることもあります。
また、機能的矯正装置は顎の位置を誘導して成長をコントロールする役割を果たします。どの方法を選ぶかは歯科医師の診断と、子どもの協力度によって決まることが多いです。
プレオルソ(マウスピース型矯正装置)
取り外し可能なマウスピース型装置で、就寝時や日中の数時間に装着します。舌や口唇の筋肉のバランスを整えることで、反対咬合の改善を目指します。装着が簡単で子どもに負担が少ない点が特徴です。
拡大床
上顎を横に広げることで、歯が並ぶスペースを確保しつつ、噛み合わせの改善を図ります。取り外し式であるため、食事や歯磨きの際に外せる利点がありますが、装着時間を守ることが成功の鍵です。
チンキャップ
下顎の成長を抑制するための装置で、主に骨格性の反対咬合に用いられます。頭に装着するため目立ちやすいデメリットがありますが、顎の成長が盛んな幼児期〜低学年に効果を発揮します。
機能的矯正装置
下顎を前方あるいは後方に誘導し、噛み合わせを改善する装置です。顎の成長を利用するため、成長期に用いると大きな効果が期待できます。
治療期間と費用の目安
反対咬合の治療期間は、症状の程度や治療法によって大きく異なります。軽度の歯性反対咬合では1〜2年程度で改善が見込めることもありますが、骨格性で重度の場合は数年にわたる長期的な治療が必要になることがあります。
費用も装置の種類や医院の方針によって変動します。プレオルソであれば10〜30万円程度、拡大床は20〜40万円、チンキャップや機能的矯正装置では15〜50万円が目安です。中学生以降の本格矯正ではさらに費用がかかり、60〜100万円以上になることも珍しくありません。
このように期間と費用は個別のケースに依存するため、契約前には必ず総額での見積もりを確認することが大切です。
以下に一般的な目安をまとめます。
治療法 | 期間 | 費用相場 |
---|---|---|
プレオルソ | 1〜2年 | 10〜30万円 |
拡大床 | 1〜2年 | 20〜40万円 |
チンキャップ | 2〜3年 | 15〜30万円 |
機能的矯正装置 | 2〜3年 | 25〜50万円 |
本格矯正(中学生以降) | 2〜4年 | 60〜100万円 |
費用は医院によって異なり、初診料や調整料が別途かかる場合もあります。契約前にトータル費用を確認しておくことが大切です。
反対咬合の治療を始める前に確認すべきこと
反対咬合の治療は長期にわたるため、開始前に確認すべき点がいくつかあります。まず最も大切なのは子どもの協力度です。特に取り外し式装置では装着時間を守らなければ効果が得られず、治療が長引く原因になります。
また、口呼吸や舌の癖といった生活習慣を改善できるかどうかも治療成功の鍵となります。これらを放置すると、装置で改善した歯並びが再び乱れるリスクがあるため、習慣改善と矯正を並行して行う必要があります。
さらに、通院の頻度や治療が一期だけで終わるのか、将来的に二期治療や外科治療が必要になるのかも確認しておくべきです。家族全体で長期的な治療計画を共有することが、後悔しない選択につながります。
事前に以下の点を確認しておくことが重要です。
- 子どもの協力度:取り外し式装置では特に重要。装着を嫌がらないか、継続できるかを確認。
- 生活習慣:口呼吸や舌癖がある場合は同時に改善が必要。
- 通院頻度:多くは1〜2か月に1回の通院が必要。学校や習い事との両立ができるか検討する。
また、治療が一期で終わるのか、それとも将来的に二期治療や本格矯正が必要なのかも確認しておくと安心です。
まとめ
反対咬合(受け口)は自然に治ることは少なく、放置すると咀嚼や発音、顔貌に大きな影響を与える可能性があります。幼児期から小学校低学年の段階で治療を始めると、顎の成長を利用して改善しやすく、将来的な負担を減らすことができます。
プレオルソ、拡大床、チンキャップ、機能的矯正装置など、子どもの症状に合わせた治療法があり、それぞれの期間や費用も異なります。
気になる症状があれば早めに歯科医院に相談し、子どもの成長段階に合った最適な治療を検討することが大切です。
よくある質問(反対咬合・受け口矯正)
Q1. 子どもの受け口は自然に治ることがありますか?
軽度のケースでは成長に伴い改善する場合もありますが、多くは自然に治りません。特に骨格性の反対咬合は成長とともに悪化することが多いため、早期の診断と治療が推奨されます。
Q2. 反対咬合の矯正は何歳から始めるのが良いですか?
一般的には幼児期〜小学校低学年(3〜8歳)の早い時期に開始するのが理想です。この時期は顎の成長をコントロールしやすく、将来的に抜歯や外科手術を回避できる可能性が高まります。
Q3. どのような矯正装置が使われますか?
代表的な装置にはプレオルソ(マウスピース型)、拡大床、チンキャップ、機能的矯正装置などがあります。症例によって適切な装置は異なるため、歯科医による診断が不可欠です。
Q4. 治療期間はどれくらいかかりますか?
子どもの反対咬合治療は1〜3年程度が目安です。ただし症状の程度や装置の種類によって異なり、経過観察や二期治療を含めるとさらに期間が延びることもあります。
Q5. 矯正中に学校生活へ影響はありますか?
ほとんどの場合、大きな支障はありません。プレオルソや拡大床などの取り外し式装置は食事や体育の際に外せるため、学校生活との両立がしやすいです。チンキャップのように目立つ装置の場合は夜間中心に使用することもあります。
Q6. 治療費用はどのくらいかかりますか?
装置の種類によって異なりますが、プレオルソで10〜30万円、拡大床で20〜40万円、チンキャップや機能的矯正装置で15〜50万円程度が目安です。本格矯正に移行する場合は60〜100万円以上かかることもあります。